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愛犬・愛猫と心地よく暮らす家づくりの工夫とは

人とペットの幸せを
形にする住まいのアイディア

近年、愛犬や愛猫と暮らすご家庭から「ペットも人も快適に過ごせる住まいにしたい」というご相談をいただく機会が増えています。ライフスタイルの変化や飼育環境の多様化により、住まいに求められる役割も広がってきました。心地よい暮らしを実現するためには、犬や猫それぞれの習性を理解しながら、間取りや素材選び、生活動線の工夫に配慮することが大切です。今回は、実際の施工実例を交えつつ、愛犬・愛猫と快適に暮らすためのポイントをご紹介いたします。
犬と猫 写真

愛犬・愛猫との暮らしの変化

かつて日本では、犬は庭先で番犬として暮らし、猫は自由に外と家を行き来する姿が一般的でした。しかし1990年代以降、飼育スタイルは大きく変わっていきます。犬については、外飼いが主流だった時代から、2000年代には「室内飼い」が広がり、一般社団法人ペットフード協会の調査によれば、2020年には約9割の犬が室内で暮らすようになりました。その背景には、防犯機器の普及による番犬としての役割の低下や都市化の進展に加え、夏の暑さや冬の寒さから犬を守ろうとする動物福祉への意識の高まりが挙げられます。

犬 写真


猫も同様に「室内飼い」が推奨され、2020年には約93%が室内で暮らすようになりました。これは、交通事故や感染症の予防に加え、野良猫問題や野生動物への影響といった社会的課題への配慮が広がったことが大きな理由です。背景には、犬や猫を「大切な家族」としてとらえる意識の高まりがあります。こうした変化に伴い、住まいづくりにも、人とペットがともに快適で、互いにストレスを感じにくい環境を整える工夫が求められるようになってきました。

犬と猫 写真

愛犬・愛猫の習性や特徴

人にとって快適な住まいが、必ずしもペットにとって最適とは限りません。家づくりを検討する前に、彼らが持つ習性や特徴をしっかりと理解することが大切です。こちらでは、愛犬と愛猫それぞれの習性や特徴をご紹介いたします。



犬写真
愛犬の習性や特徴

1.外とのつながりを意識
犬は散歩や外遊びを日課とし、外の空気や刺激を求める動物です。飼い主や他の人と触れ合い、目を合わせたりすることで、安心感や絆を深めようとします。 好奇心が旺盛で動くものを追いかける習性があるため、庭や土間といった外とつながるスペースがあると自然に心地よく過ごせるでしょう。

2.縄張り意識と強い警戒心

犬は自分の縄張りを守ろうとする本能を持ち、見知らぬ人や物音に敏感に反応します。日本の住宅事情では鳴き声が近隣トラブルにつながることもあるため、訪問者を怖くないと学ばせたり、玄関まわりを落ち着ける環境に整えることが大切です。

3.高い学習能力

この学習能力を活かすことで、トイレや待機スペースをスムーズに覚えてもらいやすくなります。無理に叱るのではなく、正しい行動を促す環境づくりが重要です。

4.穴を掘る習性

犬は昔、暑さをしのいだり、食べ物を隠したりするため、穴を掘って暮らしていました。現代でもその習性は残っているため、庭を設計する際は「掘ってもいい場所」をつくるなど、犬の習性を受け入れた工夫が必要です。



猫写真

愛猫の習性や特徴

1.高い場所に登る傾向
猫は、ノミやダニを避ける目的や他の猫に対して優位性を示すため、本能的に高い場所への移動を好みます。住まいの中にキャットウォークや造作棚を設けることで、こうした本能を満たし、猫のストレス軽減にもつながります。

2.狭い場所を好む習性
猫はもともと単独で行動する動物であり、自分のペースを大切にします。昔の名残から、身を守るために物陰に隠れたり狭い場所に入ったりする習性があるため、安心できる「隠れ家スペース」があると、落ち着いて過ごすことができます。

3.清潔さへのこだわり
猫は非常にキレイ好きで、トイレや寝床が汚れていると強いストレスを感じます。糞を埋める習性があるため、こまめな掃除はもちろんのこと、砂の種類やトイレの設置場所も重要なポイントです。

4.爪とぎの習慣
猫にとって爪とぎは、古い爪をはがして新しい爪を出すための行動であると同時に、縄張りを示すマーキングの役割もあります。壁や柱で爪を研ぐのは自然な行動なので、専用の爪とぎスペースやを用意することで、家も傷みにくくなります。
M様邸 愛犬

愛犬・愛猫と快適に暮らすポイント

愛犬や愛猫と暮らす住まいには、人だけの暮らしでは気づきにくい視点が必要です。設計の段階でちょっとした工夫を取り入れることで、日々の安心感や快適さは大きく変わります。ここでは、犬と猫に分けて、それぞれの暮らしを支える家づくりのポイントを5つご紹介いたします。




愛犬と暮らす家づくりのポイント

1. 床材の工夫
犬は滑りやすい床で関節を痛めやすく、特に小型犬や高齢のペットでは怪我につながるリスクが高まります。無垢材を使用したフローリングや適度に摩擦がありクッション性のある素材を選ぶと安心です。

2.庭の設置計画
犬にとって体を動かすことは、健康維持やストレス解消に欠かせない要素です。そのため、庭を設けてリビングからウッドデッキを介して外へ出られるようにすることで、犬が自然に庭遊びへと移行できる環境が整います。

3. ペットゲートの活用
キッチンや階段などは危険が多く、思わぬ事故につながりやすい場所です。ゲートを設置すれば、調理中のやけどや食材の誤飲を防ぐことができます。ゲートは犬のジャンプ力に応じた高さを確保することが重要で、最低でも1m~1.5m以上のものを準備する必要があります。

4. 足洗い場の設置
玄関脇に専用の足洗い場を設置することで、雨の日や泥道を歩いたあとはすぐに綺麗にすることができ、安心です。寒冷地では屋外よりも屋内型の洗い場が使用しやすい場合もあるため、水栓や排水の位置、床材の防水性まで考えて設計することが重要です。

5. 温度と空気環境への配慮
犬は人より暑さや寒さに敏感で、体調を崩す原因になることがあります。断熱性能を高めてエアコンの効率を良くしたり、床暖房で冬の寒さを和らげたりすることで、快適さと健康を守ることができます。さらに、毛やにおいへの対策として、掃除のしやすい動線や適切な換気計画も大切です。





愛猫と暮らす家づくりのポイント

1.上下運動できる空間
猫は高いところから部屋全体を見渡すことで安心感を得る動物です。上下運動ができないと運動不足やストレスが溜まり、問題行動の原因にもなります。キャットウォークやステップを設けることで、限られた面積でも理想の環境が整います。

2.窓辺のくつろぎスペース
猫は外を眺めることが習性のひとつで、日向ぼっこをしながら長時間過ごすこともあります。窓辺にベンチや棚を設けて居場所を確保すると、猫にとって心地よい時間を過ごせます。季節や時間帯で日差しの入る場所が変わるため、複数の窓際にくつろげる場所をつくると理想的です。

3. 掃除とニオイ対策
猫は毛の抜け替わりや吐き戻し、トイレ砂の飛び散りなど掃除の負担が多いため、床材は水拭きに強いフローリングやタイルを選ぶと手入れが楽になります。ニオイは猫そのものではなく糞尿に由来するため、トイレのしつけとこまめな掃除が重要です。洗面所や収納家具の陰など、少し目隠しになる場所にトイレを配置すると猫も落ち着きやすくなります。

4.爪とぎ対策
爪とぎは猫の本能的な行動であり、家具や壁を傷つける原因にもなります。専用の爪とぎを用意しても、気に入らなければ使わないことも多いため、移動可能なタイプを複数そろえ、猫がよく過ごす場所に置くことが大切です。造作で安定した爪とぎ柱を設けることも有効な工夫です。

5.温度や湿度の管理
猫は体温調節が苦手で、特に夏場は熱中症のリスクが高い動物です。猫は鼻や肉球以外に汗を出せる場所がないため、快適に過ごせる環境を整えることが欠かせません。室温20〜28℃、湿度50〜60%を目安にエアコンや加湿器を使って調整をしてあげることが大切です。

愛犬・愛猫と暮らすお家の施工実例

こちらでは、花みずき工房で実際に建てられたお客様の施工実例を交えながら、ペットと暮らす住まいのアイディアをご紹介いたします。



LIXIL「猫壁」を使った脱着式キャットタワー

猫は上下運動によってストレスを発散する習性があるため、床だけの平面的な空間では十分な運動量を確保しにくいものです。そこでおすすめなのが、LIXILの「猫壁:にゃんぺき」。マグネット式で簡単に取り付け・取り外しができ、パーツの配置を上下左右に自在にアレンジできるので、愛猫が飽きずにのびのびと遊び回れる環境をつくることができます。



梁を活かしたキャットウォーク
猫は高い場所から周囲を見下ろすことで安心できる習性があるため、高所を好む傾向があります。そこで梁をあえて見せ、キャットタワーから梁へとつながる動線を設けることで、愛猫は梁の上を自由に行き来できるようになります。見晴らしのよい梁は、猫にとって安心してくつろげる特別なお気に入りの居場所となるでしょう。



タイル床のペットルーム
室内の一角に設けたペット専用スペースの床には、耐水性・耐傷性に優れたタイルを採用しています。タイルはフローリングに比べて汚れが染み込みにくく、トイレを失敗してもサッと拭き取れるので安心です。さらに硬質な素材のため爪による引っかき傷がつきにくく、長く美しい状態を保てるのも魅力のひとつです。



ペットトイレ専用スペース
ペットのトイレは置き場所によっては生活空間の使い勝手に影響することがあります。専用スペースを設けることで、すっきりと設置できるだけでなく、日常生活をより快適に保つことができます。



ペット専用くぐり戸
ペット専用のくぐり戸を設けることで、ペットは自分のタイミングで自由に部屋を行き来でき、ストレスを感じにくくなります。また、通常の扉を開閉して通す場合に比べて、体を挟んで怪我をさせてしまう心配もなく安心です。
M様邸 愛犬

愛犬・愛猫との暮らしの注意点

愛犬や愛猫と室内で暮らす時間が増えると、住まいの中で気をつけなければならないことも多くなります。ここでは、設計以外の視点も含めて、日常生活の中で意識しておきたい注意点をご紹介いたします。

1. 音や生活リズムへの配慮
犬や猫は人間よりも聴覚が優れているため、特に大きな音や急な物音は、ペットに強いストレスや恐怖心を与える原因となります。加えて、生活リズムが不規則になると、健康面に影響を及ぼす可能性があるため、飼い主ができるだけ一定の生活習慣を心がけましょう。

2.誤飲やケガの防止
ペットは好奇心旺盛で、床に落ちた小物や紐、電気コードなどに口を出してしまうことがあります。誤飲は消化器官を詰まらせ、命に関わる危険も少なくありません。さらに家具の角や段差によるケガにも注意が必要です。日頃から整理整頓を心がけ、危険な物は手の届かない場所に片づけ、コード類にはカバーを付けるなど、先回りした安全対策が重要です。

3. 来客時や外出時の対応
来客に吠えたり、外出時に強い不安を感じるペットも少なくありません。来客時にはインターホンやチャイム音に慣れさせておくと安心です。また、留守番に慣れていないペットをいきなり長時間留守番させるのは大きなストレスになるため、将来を見据えて少しずつ練習しておくことが大切です。

今回は、愛犬や愛猫の特徴や快適に暮らすための工夫についてご紹介いたしました。習性や個性を理解し、家づくりの設計段階からしっかりと配慮することで、人とペットの双方が安心して心地よく過ごせる空間が生まれます。花みずき工房では、設計士がご家族のライフスタイルとペットの暮らしやすさの両方に寄り添い、日々の快適さから将来の安心までを見据えた住まいづくりをご提案しています。住まいに関するご相談や具体的なご希望などがございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。


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設計

Mieko Sano

保有資格
一級建築士
宅地建物取引士
インテリアコーディネーター

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全てのお客様に届けたい想いの形。

浜松市・静岡市を拠点に「暮らしに魅了される家づくり」を続けて30年。
100%自社設計で描く美しいデザインのオーダーメイドな家づくり。